2011年に発売されたYouTubeを使った勉強法の本を図書館で見つけました。「YouTube 英語勉強法」、著者は本山勝寛さんです。「両親が家にいない超極貧アルバイト生活」を乗り越え独学で東大合格、そこからリスニングを中心とする1年足らずの勉強法で英語を身につけ、ハーバード大学院に合格されました。
10年以上も前の本で、一度も「イマージョン」という単語は出てきませんが、本山さんの実践されたことはまさしくイマージョン。1日5分から始めて、徐々にレベルを上げていくステップや使用する動画が詳細に書かれています。
それから年月を経ているため本でおすすめの動画をそのまま見るのがベストではないのかもしれませんが、1年足らずという短期間でハーバードの院に合格する成果を出された経験談には学べるものが多そうです。
ちなみに、もともと東大に合格するだけの頭脳がある別世界の人、と見てしまうのはとってももったいない!東大合格直後のアメリカ訪問時は、こんな状態だったそうですよ。
マクドナルドで注文しようにも、店員に聞かれていることがまったく分からない。困った挙句、「A」とか「C」とか、とにかくセットメニューの番号を伝えるだけで汗びっしょり。
アムトラック(アメリカ全土を走る鉄道)で近くの席のアメリカ人から話しかけられても、何を言っているのかまったく分からない。とにかく「アイムジャパニーズ。アイキャンノットスピークイングリュッシュ」と言い放って終わり。
・・・よくある日本人のお話しですね。東大の入試英語が解けるだけの理解力があって、あの小難しい単語をたくさん知っていても実践ではこんなに使えないなんて
。日本の英語教育、本当になんとかしないとですね。というわけで、本山さんの「YouTube 英語勉強法」から、私たちのイマージョンラーニングに使えそうなエッセンスやイマージョンラーニングで起きる変化をさぐっていきたいと思います!
イマージョンラーニングとは:「イマージョン=浸ること」。習得したい言語に浸かる、つまり大量に聴く・読むインプットを行う言語の習得方法のこと
著者の英語学習法と成果:3ヶ月で成長を感じられた
東大生の本山さんが行った勉強法は、YouTubeでのリスニングが中心でした。成果も驚くほど早く出てきたようです。
米国で英語が聞き取れない・話せないの挫折を経験した。このままではいけないとBBCのニュースに挑戦したが、すぐ続かなくなった。アメリカ留学を考えるようになり、TOEFLという試験のリスニングの点数が低かったことから、戦略的にリスニング力を向上させるように務めた。
英語を英語としてそのまま脳にインプットするには、生の英語のリズムでひたすら聞くことが重要。
あらゆる機会に英語を聞くように心がけたところ3か月ほどで成長の兆しが見え、半年ほどでかなりの割合で聞き取れるようになった。そして、1年足らずでハーバード大学院に合格することができた。
ここを読んで、成果を感じられるまでわずか3ヶ月、というのがポイントだと思いました。というのは人間の脳が短期的な報酬を欲しがるからです。
ダイエットを始めて食事制限、運動、お酒をやめたりしても体重や見た目に変化がなければ、大半の人が挫折しますよね。ですが体重が少しずつでも減ったり筋肉が付いてきたり、人に気づいてもらえたりするという報酬が得られると、もっと頑張れてしまうのが人間というもの。
この本山さんのケースも、3ヶ月で成果が感じられるようになったことはすごくラッキーだったと思います
「YouTube 英語勉強法」のポイント・注意点
「生の英語のリズムでひたすら聞くこと」がこの学習法の真髄ですが、そのポイントと注意点をまとめていきますね。
つまらなくて続かなくなるため、CD教材はお勧めしない
CD教材はそのほとんどが「つまらない」。日本語に置き換えて考えたらよく分かるが、他人のありきたりな会話やニュース番組ばかり聞きながら、毎日を送っている人はそういないはず。面白くなければ続かない。面白くないから続かない。
勉強の面白さを決定するのは、●●が動くかどうか
私たちが何かを面白いと感じるのは、感情に動きがあったとき。人はそのシーンや言葉を記憶しやすくなり、もっと継続したいと思うようになる。
音だけよりも映像=イメージが伴うことによって、感情の動きは倍増する。また、映像は文字だけより一瞬で多くの情報をインプットすることができる。
そのため、何よりも「興味のある映像」を活用することが効果的。
リスニング初心者は「聞いてはいけない・すぐ文字を見てもいけない」
リスニング学習を始めてすぐに中身が聞き取れると思ってはいけない。早く聞き取りたいと焦ると、それだけ途中で諦めてしまう可能性も高くなる。
聞き取れないとすぐに文字を読んでしまうことも、実はもう一つの落とし穴。わからないときは何度か繰り返し聞いてから確認する。
さらに、聞き取れずに文字で読んだ英語を日本語に訳して理解しようとするのはもっとNG。いつまで経っても生の英語を聞き取る力は伸びない。
中身がわからない→文字を見る・和訳を確認する→聞き取れるようにならない・・・このジレンマこそがこれまでのリスニング学習の大きな壁だった。
その「教材選び」は間違っている。最初は1-5分から
リスニング初心者のうちは海外ニュースなど内容が難しいものは見ない。映画やテレビはニュースよりも楽しめるが、ニュースのようにはっきり話されていないし、スラング(俗語)が使われることも多い。また、映画だと2時間など長すぎるのも難点。
慣れるまでは、1〜5分の動画の視聴が良い。それ以上だと集中力が続かないし、内容も追えないため。この点を満たしてくれるのが、YouTubeの短い動画。
話すトレーニングは別でしないといけない
この勉強法はスムーズに英語を話せるようになることを目的にしているわけではなく、そのための訓練は別途必要。だがリスニング力のアップが、スピーキングの上達にとっての重要な要素になることは間違いない事実。
「6つのステップ」で生の英語がスラスラ聞き取れるようになる!
具体的な動画とそのステップの期間が、以下のようにまとめられています。
STEP1:毎日1回、英語を浴びる時間を作る(5分〜1週間)
STEP2:お気に入りのジャンルで「多聴」を繰り返す(1週間〜1ヶ月)
STEP3:ゲーム感覚で「精聴」力をアップさせる(1ヶ月〜3ヶ月)
STEP4:生のスピードに耳を慣れさせる(3ヶ月〜6ヶ月)
STEP5:より難易度の高いコンテンツに挑戦する(6ヶ月〜9ヶ月)
STEP6:本格動画でオンライン体験留学(9ヶ月〜1年)
これはスタート時点のその人の実力や、最終的な目標によって変わってくることですね。でも1年でここまでやり切る、と決めることがこの方のイマージョンを劇的に効率化したのは間違いなさそうです。
具体的な動画の見方
上記の6つのSTEPのうち、5つ目に動画の見方が説明されています:
- まずは字幕なしで視聴
- 英語字幕付きで視聴
- 内容理解が追いつかない部分を英語テキストで確認
- それでも英語の表現がわからない箇所を日本語で確認
- 不明な箇所を確認したら、もう一度字幕なしで視聴する
特に最初から文字情報に頼ってしまうことに注意、ということでした。
イマージョン以外の勉強法・コツ
さすがに東大合格を独学でつかみ取られた著者だけあって、勉強を極めた人らしいアドバイス、英語をたくさん聞くこと以外の方法もいくつか紹介されていました。
ディクテーション
ディクテーションとは、書き取りのことです。聞こえてきた英語を書き取るのですが、びっくりするくらい疲れます・・・。著者はYouTubeの視聴を始めてから1ヶ月後くらいからの書き取りを勧めておられます。
ゲーム感覚でディクテーションを楽しめる英語学習サイトもあるので、ご自分に合うものがあるか探してみてください(本書では smart.fm というサイトがお勧めされていました)。
字幕を見ながら読む:これなら音読の欠点を補える
これもSTEP3にある勉強法ですが、スピーチの視聴に慣れてきた頃に口から英語を出すトレーニングが2つ紹介されていました:
●字幕を見ながら実際のスピーチとほぼ同じタイミングか、少し遅れて発話する
●字幕は見ず、音だけを頼りに音声の後に声を出してついていく
スピーチは聞く人に理解してもらえるよう、わかりやすい話の組み立て、語彙、スピードで話されているからということでした。が、私がここで気づいたのが一つ目の字幕を読む方法の長所です。
音読って、どうしても自分流の音、スピードで読んでしまうものですが、この方法なら音読の欠点を補えるのではと思うのです。スピーチについていくだけの英語力って相当なものですが、何度も繰り返して見た動画ならなんとかなるかもしれません。ぜひ、自分でも取り入れてみたい方法だと感じます。
勉強の成果は3か月ごとに確認しよう
学生の頃、1学期がほぼ3ヶ月ごとだったことを例に挙げて、期間の区切りと成果の確認が重要であると説いておられます。
具体的な確認方法としてはTOEICを挙げられており、リスニングを始める前と3ヶ月ほど経過した時点で比較すること、TOEICの得点自体を目的にしないことも言い添えておられました。
本には書かれていない、著者の英語学習が成功した理由
ここからは私の感じたことを書かせてもらいますね。書かれていないけれど、すっごく大切なことがあります。
それは、著者の英語を学ぶ目的がめっちゃはっきりしていたこと。独学で東大合格の成功体験をお持ちだったこと。さらに、周囲にハーバードに留学した人がいたのでは?と思います。
目標を達成させるためには目的をはっきりさせるのが大切、とよく言われますよね。具体的に、どんな場面でどうなりたいか。そのハングリーさが本山さんはとても強かったのではないでしょうか。こういうガッツがある人は、何ごとにおいてもそうですが短期間でも変化していけるのだと思います。
それから二番目に、東大合格されたことも大きいですね。大学受験で文法の基本を押さえられていること、数多くの英語長文を読み込んでいること、短期間でも成果を出す勉強法を経験的に知っていること。これらは、一般の人にはない「自分への信頼」という資質です。
さらに、人は環境の生き物と言う通り、周囲の人が数多く東大に行っていれば俺も、となりますし、そこに違和感は感じられません。一方で、田舎の中堅県立高校で東大を目指すとドン引きされる可能性大ですよね・・・。本山さんも割と身近なところに海外大への留学生が何人もいたりして、ハーバードも割と手の届く目標だったのでは、と思われます。
まとめ:私たちのイマージョンに、どう活かしていくか
この本のいいところは、学習STEPが具体的で、期間が区切られていることだと感じました。他のイマージョンラーニング実践者より何をどのくらいやったかが、明確に書かれていて読者が行動に移しやすいのです。
本山さんは東大に独学で合格された上「16倍速勉強法」などの本を出されているように、効率的な勉強法を極めた方でもあり、説得力がありますね。これを私たちが自分に取り入れられるとすると、主に以下のようなことになると思います。
・最初は小さく始める
・いつまでに何をどう学ぶか、期間を区切って進めていく(詳しくは本書を参照ください)
・3ヶ月ごとに、成果を確認する試験や会話の場などを設ける
・ゴールを達成してどうなりたいかを強くイメージする
・面白くない動画選びや、TOEICを目的にした勉強はしない
・スピーチの字幕を音読する方法やシャドーイングはぜひ取り入れたい
また、基本はこれまでの記事で書いてきたイマージョンと共通点が多く、やっぱりこの方法で間違い無いんだなと感じました。イマージョンって、実はとってもシンプルな方法なのでは?あとは私たちがこれを実践して、英語を身につけていきたいですね。
Now it’s time for us to learn English the easy way! ということで、また次の記事でお会いしましょうー