大手グローバル企業で経験した、「社内英会話教室」とその末路

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私は11年半ほど超大手グローバル企業に勤めてきたのですが、社内の英語教育は盛大に実施されていました。予算も莫大なはずです。そこまで大きな取り組みだったのは、社員数1万名を超える企業でもビジネスで使える英語力を持つ社員がごくわずかしか存在せず、それが外国人エグゼクティブとのコミュニケーションにおいて大きな課題になっていたからです。

おそらく個人として、自分の英語学習に役立つ情報を集めようとこの記事を読んでくださっているあなたにお伝えしたいことは、英会話教室やオンライン英会話で学んでも、ほとんどの人*は期待している成果を得られませんよという、シンプルな事実です。 * ほとんどの人 = 上級者を除く全ての人、とご理解ください。

「たくさんネイティブと話せば、英語を話せるようになる」と信じてそうしたサービスを利用しても、特に初級者の方にはかなりの回り道になる可能性が相当高いです。実際に挫折した方は数知れず。それがもう悲しくて見ていられなくて・・・申し込み前にこの記事を読んでくださっているのであれば、やめておかれることを心の底からお勧めします。

他社の英語学習サービスを批判しているのではなく、学習者さんが高いお金と時間を費やして、それが実らないこと、期待した気持ちを裏切られることがガマンできないだけですからね。英会話サービスでは大きな英語力の向上を期待できない理由については、こちらをご覧ください。 🔳 関連記事:英語初心者が英会話スクールで成果を出せない理由

・・・要は、基礎のインプットを徹底的にやってベースを作ってからじゃないと、話せるわけないやん!ということです。会話って、同時にいくつもの情報を瞬間的に処理しないといけない、とっても複雑な行為なのです。だから先に、骨の髄まで基礎の基礎を叩き込んで、無意識に入れておかないといけないのですね。

目次

会社の看板施策だった、社内英会話教室

ドメスティックな地方の会社に、ある日突然外国人エグゼクティブがやってきました。それまでは大半の職種で英語を使うことはほとんどなく、一部の現場のスタッフさんがお客様先で少し英会話に困るくらい、という平和な日々でしたが、それも一変してしまいました。加えて、地方の一有料企業だった会社がグループ間で合併を繰り返し、マネジメント層の顔ぶれにも英語使用者が一気に増えていきます。

当然、日常会話・メールやチャットのやり取り・会議資料の翻訳などで日本人スタッフにとって突如、英語を使わないと仕事が前に進められない状況がやってきました。会議運営にはさすがに通訳さんが入ります。

パナソニックの通訳機「パナガイド」を耳につけるのですが、これがまたおじさま達の手や耳の油脂で。。会議後の後片付け、ちょっとヤでした 笑。

https://tanakadenki-market.com/html/page7.html

外資らしいスクラップアンドビルド、ものすごいスピードでの統合を経て、会社は1万人以上の規模に拡大。程なくして、社員教育の部門からこんな施策が打ち出されました – 「社員は、業務時間中に英会話教室のレッスンを受け放題!」

当時はリモートワークなどない時期。まずは本社の一部に、英会話教室用の常設会議室が確保されました。ただでさえ会議室が少ないのに・・・そして、1フロアあたり3-5名の英語ネイティブスタッフがどこかの英会話スクールから派遣されてきたのです。それが4フロアなので、1日にトータル10-20名もおられたことになりますね。

ネイティブ講師は毎日常駐だったと記憶しています。その後、本社以外の主要な拠点にもスクールが設置されました。この施策で一体いくらの予算を使っていたのでしょう。おそらく年間1億円は下らないのではないかと思います。

会社が儲かっていた時期ではないのですが、それほど英語への翻訳・通訳にかける時間の無駄を減らすニーズが高かったということなのですね。

巨大予算をかけた社内英会話教室の末路

この一大施策の末に得られたもの、それは「多くの社員が外国人とのカタコトの会話に慣れた。」それだけです。

まず、「業務時間中に」英会話を受け放題、というのはおかしいですよね。いやいや業務時間は仕事せんかい、と思うわけです。

ハイパフォーマンス人材には仕事が集まるので、どうしても忙しくなります。タイムマネジメントをして英語の時間を捻出するのも力量のうちかもしれませんが、実態として仕事ができなくて仕事が回ってこないお父さん達が足しげく英会話に通いました。本気で忙しい社員にとっては、傍で英語学習に時間を使う人たちを見てモチベーションが落ちることになります。

ネイティブ講師が綺麗な女性なので、と教室に通っている人もいました。暇だから、と朝から晩まで5コマも受けている社員まで・・・。さらに、英会話受講者のうち多くのメンバーが普段仕事で英語を使うことはほとんどなかったそうです。未来のジョブチェンジのために学んでおく、ということなのかもしれませんけどね。

それに、仕事以外のことをしている人がそれだけたくさんいても、会社が回っていたことが本当に不思議です。というか、人材配置に失敗してますよね。

最初は社内で話題性もあり多くの人が英会話に通っていましたが、やがて通い続ける人は少なくなり、ネイティブ講師の人数や勤務日もどんどん少なくなっていきました。仲良くなった講師にその当時話を聞いたところ、「朝から晩までレッスンが一つもないから、ずっと自分のプライベートのブログを書いている」とも言っていました。

数年後、社内英会話教室の契約が更新されないことになりました。あれだけの大きな施策で、どれだけの成果が出たのかが発表されることはありませんでした。さすがにその後は、選抜社員のみに英語教育を実施することになりましたけどね。数億円の責任は、誰が取るのでしょうね。

社内英会話教室が失敗した理由

この施策は失敗だったかというと、狙った効果には至らなかったのでそう言って良いと思います。残念ですけどね。そうなった理由はいくつか思い当たりますが、あまりにも戦略が弱すぎたと感じます。んもう、教育担当者、そのポジション私に譲ってほしいわ。

今振り返ると、一人一人がどのくらいのレッスンを受講して、その結果どの程度の成長を示たか、効果測定が全くされていませんでした。また、それは全社にフィードバックされることもありませんでした。

また、個々人にとって何がどうなれば成果が上がったと言えるのか、があらかじめ示されていませんでした。例えばTOEICやVersantで何点アップするとか、基本の100例文を完璧に暗唱できたとかそういった数値的な指標で測れる成果です。

目標とする状態を、数値を含めて具体的に示しておく。そのブレイクダウンをすると、誰にどんな教育をすれば良いか、受講対象者がはっきりします。これで不要な受講がなくなり、そのレッスン代が削減でき、忙しい社員のモチベーションダウンも防げますね。

個人が英会話教室やオンライン英会話を利用する場合、これらの問題はクリアされているはずです。つまり、幾つのレッスンを受けたか。どのくらいの頻度で受けたか。その結果、何がどれくらいできるようになったか。あるいは、テストの点が何点上がったかです。

それでも私が英会話レッスンを、特に初級者の方におすすめしないのは、「英会話が英語力を鍛える場ではないから」です。

英会話にトライするのは、基本の表現を完璧にしてから

英語圏に10年以上、海外赴任しておられた大先輩がいます。ですがその方の話す英語は、びっくりするくらいジャパニーズイングリッシュです。リスニングに問題はないし、海外との文化的な差にも対応されるし、話題も豊富です。近くで見ていると、外国人の皆さんと非常に上手くコミュニケーションされます。

ですが、発音が思いっきりカタカナ英語なのです。ほとんどのコミュニケーションでは問題ありませんが、ときどき発音が通じずに何度も言い直すこともあるようです。

これは何が起きているかというと、発音のトレーニングを十分せずに会話を始めてしまうことによって、そのジャパニーズイングリッシュが固定してしまったのですね。これを「化石化」と言います。

ちなみに、この海外赴任10年の先輩はビジネス特化のオンライン英会話を、1年以上に渡りほぼ毎日25分、受けたそうです。それでも、私が知るところでは発音の改善は見られませんでした。受講したのが発音専門のコースではないとはいえ、これが「化石化」です。つまり、繰り返し行った行為がその状態で固まってしまうということです。

このように自然な英語を身に付ける前から無理にでも話そうとすると、自分流の発音や不自然な英語が癖になってしまうことがあります。英会話教室の講師は修正してくれるかもしれませんが、その場で1,2度正しい表現を聞くだけで、後までしっかりと覚えておくことはできますか?

講師に修正してもらったその場でメモを取ったり何度も言い直すのも良いのですが、中学までの基本の表現を丸暗記しておくことは自分一人で十分できることなのです。自分のペースで進められるし、テキストがあれば復習に何度も同じ英文に触れられるという点でも、基礎の習得についてはご自分で学ばれることをおすすめしたいと思います。

まとめ:やっぱり基礎を固めよう!

英語学習には、やはり基礎をしっかりと固めることが何より大切です。どこかで何度も聞いたことだと思いますが、でも英語に限らず基礎が大事なのは何事もそうですよね。

英語ができるようになるに英会話、と考える方が本当に多いのですが、特に初級者の方は基本の表現を完璧に使いこなせるようになってから会話練習に進むことを強くおすすめします。その方がより効率的に、そして確実に英語力を伸ばすことができるからです。言わば、英語学習の近道なのですよ。

じゃあこの基礎固めをどうやってやればいいのか、基礎を固めるとどんな状態になれるか。それを次の記事で書かせてもらいますね。Build your English skills like a house – start with a strong foundation. ですよっどうぞお楽しみに♪

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